安全保障協議委員会(2プラス2)

日米、対北朝鮮で共同対処確認 ライス長官、2国間協議を拒否

 日米両政府の外交、防衛担当閣僚は19日午前(日本時間20日未明)、安全保障協議委員会(2プラス2)終了後に共同記者会見し、北朝鮮に対し核問題をめぐる6カ国協議への早期、無条件の復帰を要求した。ライス米国務長官は「6カ国協議だけがわれわれの唯一の提案だ」と述べ、北朝鮮が求める米朝2国間協議に応じない姿勢を鮮明にした。

 国務長官町村信孝外相は外相共同声明を発表し、北朝鮮核兵器保有宣言に「深い懸念」を表明。「いかなる状況に対しても準備を整えておくために、引き続き情報を共有していく」とし、対北朝鮮での共同対処に強い決意を示した。日米外相が個別の第三国を対象にした共同声明をまとめるのは異例。

 共同記者会見で、町村外相在日米軍再編問題に関して、2プラス2での「共通戦略目標」を踏まえ、米軍と自衛隊の役割分担見直しと具体的な再編案について「今後数カ月間に集中的に協議する」と表明した。

 大野功統防衛庁長官は戦略目標で中国に言及したことについて「動向には注目すべきだが、基本的には仲良くしないといけない国だ」と強調。ラムズフェルド国防長官も「われわれの国益は、地域のすべての国と建設的な関係を持ち、平和と安定の維持を目指すことだ」と述べた。町村外相は中国の役割に関し「単なる仲介役ではなく、世界的プレーヤーとして働き掛けてもらう必要がある」と指摘した。

 日本人拉致事件について国務長官は「米国は引き続き日本の懸念を共有する」と協力を約束した。(共同)

 ≪日米外相会談の要旨≫

 19日の日米外相会談の主なやりとりは次の通り。

 ▽北朝鮮の核問題

 町村信孝外相 6カ国協議を再開し、北朝鮮は一刻も早く交渉のプロセスに戻るべきだ。核保有宣言は国際協約に反し、到底受け入れられない。日本国民にも不安が広がっている。中国にも積極的役割を果たすよう求めた。

 ライス米国務長官 北朝鮮に対して、多国間の安全保障は可能だし、経済支援や国際社会への復帰もできると説明してきた。北朝鮮は核廃棄という戦略的選択をしなければいけないというのが米国の立場だ。中国は(北朝鮮説得に)特別な責任がある。

 外相 一向に事態が進展しない場合は、国連のプロセス戻ることになるかもしれない。

 長官 同感だ。

 ▽拉致問題

 外相 北朝鮮の不誠実な対応で国民の怒りが強まっている。直ちに経済制裁はしないが、いずれ強い措置を取ることになるかもしれない。

 長官 拉致は米国にも重要な問題で日本を完全に支持する。

 ▽米国産牛肉輸入問題

 長官 解決に向けた努力をお願いしたい。議会、農業関係者には極めて重大な問題だ。輸入の早期再開を強く要請する。

 外相 科学的検討などのプロセスが迅速に進むことを期待している。

 ▽東アジアサミット

 長官 米国は太平洋国家であり、サミットが透明かつ開放的なものであることを希望する。

 外相 米国と引き続き連携を取っていきたい。

 ▽国連改革

 外相 今年を逃せば改革の機会は当分ない。日本の国連安保理常任理事国入りに対し、今後も米国の協力を得たい。

 長官 今後も日本を支持する。

(共同)

 ≪日米外相の北朝鮮声明要旨≫

 北朝鮮に関する日米外相共同声明の要旨は次の通り。

 一、米国務長官と日本外相は北朝鮮が無期限に6カ国協議への参加を中断し、核兵器を製造したと宣言した北朝鮮外務省声明に深い懸念を表明。

 一、北朝鮮の核計画は国際的な核不拡散体制への深刻な挑戦であるとともに、日本を含む北東アジア地域の平和と安定への直接の脅威であることを確認。

 一、両閣僚は6カ国協議を通じ、核問題の平和的、外交的解決を目指す。北朝鮮に対し早期、無条件で協議に復帰し、国際的な検証の下、ウランの濃縮計画を含むすべての核計画の完全な廃棄に応じると約束するよう強く要求。

 一、北朝鮮の声明は国際社会からの孤立を一層深めるだけで、核問題の平和的解決に向けた関係国の努力に反する。

 一、6カ国協議復帰と核計画廃棄を通じてのみ、近隣諸国や国際社会との関係正常化が可能となる。

 一、両閣僚は北朝鮮のミサイル計画に懸念を表明し、いかなる状況に対しても準備を整えておくために情報を共有する。

 一、両閣僚は北朝鮮に対し拉致問題を迅速かつ完全に解決するよう強く要求。国務長官は日本の立場を完全に支持することを再確認。

 一、両閣僚は日米安全保障体制が力強さと活力を有することを再確認し、地域の平和と安定に対する挑戦を阻止、対処する能力を有することへの信頼を表明。

(共同)

 ≪日米の共同声明全文≫

 2005年2月19日、ワシントンにおいて日米安全保障協議委員会(SCC)が開催され、ライス国務長官およびラムズフェルド国防長官は、町村信孝外相および大野功統防衛庁長官を同委員会の場で迎えた。閣僚は日米両国が直面している安全保障上の問題および日米同盟にかかる問題ならびに両国関係に関するその他の問題について協議を行った。

 【今日の世界が直面する課題に対する共同の取り組み】

 一、閣僚は日米両国間の協力関係が安全保障、政治、経済といった幅広い分野で極めて良好であることに留意した。閣僚は日米安全保障体制を中核とする日米同盟関係が日米両国の安全と繁栄を確保し、また地域および世界の平和と安定を高める上で死活的に重要な役割を果たし続けることを認識し、この協力関係を拡大することを確認した。

 一、閣僚は既に成果を生み出しているアフガニスタンイラクおよび中東全体に対する国際的支援の供与における日米両国のリーダーシップの重要性を強調した。閣僚はインド洋における地震およびそれに続く津波災害の被害者に対する幅広い支援を行うに当たり、日米間の協力が他の国の参加を得て成功裏に行われていることを称賛した。

 一、閣僚は不拡散、特に拡散に対する安全保障構想(PSI)を推進する上で、日米両国間の協力と協議が中枢的な重要性を有してきたことを認識した。閣僚は日本、米国および他の国が主催した多数国間の阻止訓練が成功裏に行われたことを歓迎した。

 一、閣僚はミサイル防衛(MD)が弾道ミサイル攻撃に対する日米の防衛と抑止の能力を向上させるとともに、他者による弾道ミサイルへの投資を抑制することについての確信を表明した。閣僚は日本によるミサイル防衛システムの導入決定や武器輸出三原則等に関する最近の立場表明といったミサイル防衛協力における成果に留意しつつ、政策面および運用面での緊密な協力や、ミサイル防衛にかかる日米共同技術研究を、共同開発の可能性を視野に入れて前進させるとのコミットメントを再確認した。

 【共通の戦略目標】

 一、閣僚は国際テロや大量破壊兵器およびその運搬手段の拡散といった新たに発生している脅威が共通の課題として浮かび上がってきた新たな安全保障環境について討議した。閣僚はグローバル化した世界において諸国間の相互依存が深まっていることは、このような脅威が日本および米国を含む世界中の国々の安全に影響を及ぼし得ることを認識した。

 一、閣僚はアジア太平洋地域においてもこのような脅威が発生しつつあることに留意し、依然として存在する課題が引き続き不透明性や不確実性を生み出していることを強調した。さらに閣僚は地域における軍事力の近代化にも注意を払う必要があることに留意した。

 一、閣僚は北朝鮮6カ国協議に速やかにかつ無条件で復帰するとともに検証の下、透明性のある形でのすべての核計画の完全な廃棄に応じるよう強く要求した。

 一、国際的な安全保障環境に関するこのような理解に基づき、閣僚は両政府がおのおのの努力、日米安保体制の実施および同盟関係を基調とする協力を通じて共通の戦略目標を追求するために緊密に協力する必要があることで一致した。双方はこれらの共通の戦略目標に沿って政策を調整するため、また安全保障環境に応じてこれらの目標を見直すため、定期的に協議することを決定した。

 一、地域における共通の戦略目標には以下が含まれる。

  • ▽日本の安全を確保し、アジア太平洋地域における平和と安定を強化するとともに、日米両国に影響を与える事態に対処するための能力を維持する。
  • 朝鮮半島の平和的な統一を支持する。
  • ▽核計画、弾道ミサイルにかかる活動、不法活動、北朝鮮による日本人拉致といった人道問題を含む、北朝鮮に関連する諸懸案の平和的解決を追求する。
  • ▽中国が地域および世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる。
  • 台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促す。
  • ▽中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す。
  • ▽アジア太平洋地域におけるロシアの建設的な関与を促す。
  • 北方領土問題の解決を通じて日露関係を完全に正常化する。
  • ▽平和で安定し活力ある東南アジアを支援する。
  • ▽地域メカニズムの開放性、包含性および透明性の重要さを強調しつつ、さまざまな形態の地域協力の発展を歓迎する。
  • ▽不安定を招くような武器および軍事技術の売却および移転をしないように促す。
  • 海上交通の安全を維持する。

 一、世界における共通の戦略目標には以下が含まれる。

  • ▽国際社会における基本的人権、民主主義、法の支配といった基本的な価値を推進する。
  • ▽世界的な平和、安定および繁栄を推進するために、国際平和協力活動や開発支援における日米のパートナーシップをさらに強化する。
  • 核拡散防止条約(NPT)、国際原子力機関IAEA)その他のレジームおよびPSI等のイニシアチブの信頼性および実効性を向上させること等を通じて、大量破壊兵器およびその運搬手段の削減と不拡散を推進する。
  • ▽テロを防止し、根絶する。
  • ▽現在の機運を最大限に活用して日本の常任理事国入りへの希望を実現することにより、国連安全保障理事会の実効性を向上させるための努力を連携させる。
  • ▽世界のエネルギー供給の安定性を維持・向上させる。

 【日本の安全保障および防衛協力の強化】

 一、閣僚は日米双方の安全保障および防衛政策の発展のための努力に対し、支持と評価を表明した。日本の新たな防衛計画の大綱は新たな脅威や多様な事態に実効的に対応する能力、国際的な安全保障環境を改善するための積極的な取り組みおよび日米同盟関係の重要性を強調している。米国は幅広い国防の変革努力の中心的な要素の一つとして、不確実な安全保障環境において適切かつ戦略的な能力を保持しうるように世界的な軍事態勢の見直しおよび強化を進めている。閣僚は日米両国が共通の戦略目標を追求する上で、これらの努力が実効的な安全保障および防衛協力を確保し、強化するものであることを確認した。

 一、この文脈で閣僚は、自衛隊および米軍が多様な課題に対して十分に調整しつつ実効的に対処するための役割、任務、能力について検討を継続する必要性を強調した。この検討は、日本の新たな防衛計画の大綱や有事法制および改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)やミサイル防衛における協力の進展といった最近の成果と発展を考慮して行われる。閣僚はまた、自衛隊と米軍との間の相互運用性を向上させることの重要性を強調した。

 一、閣僚は、この検討が在日米軍の兵力構成見直しに関する協議に資するべきものであるとの点で一致した。閣僚は、日本の安全の基盤および地域の安定の礎石としての日米同盟を強化するために行われる包括的な努力の一環として、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化することを決定した。この文脈で双方は、沖縄を含む地元の負担を軽減しつつ在日米軍の抑止力を維持するとのコミットメントを確認した。閣僚は事務当局に対して、これらの協議の結果について速やかに報告するよう指示した。

 一、閣僚はまた、地域社会と米軍との間の良好な関係を推進するための継続的な努力の重要性を強調した。閣僚は、環境への適切な配慮を含む日米地位協定の運用改善や沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施が在日米軍の安定的なプレゼンスにとって重要であることを強調した。

 一、閣僚は現行の特別措置協定が2006年3月に終了することに留意しつつ、特別措置協定が在日米軍のプレゼンスを支援する上で果たす重要な役割にかんがみて、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を適切な水準で提供するための今後の措置について協議を開始することを決定した。

(共同)

(02/20 09:13)