11月

米国大統領選挙 ブッシュ大統領再選

アメリカは民主主義などではない。今回の選挙からも金権主義であることが明らかになったではないか。民主主義というのは歴代の支配者が作り上げてきた看板に過ぎず、その実体は金権主義以外の何モノでもない。アメリカでは選挙期間が2年にもおよび、お金のない者は土俵に上がることもできない。そして選挙プロセスにおいては基本的に無限のお金を使ってもよいのである。今回の選挙では約4500億円が使われ、これは2000年の選挙より30%も増えている。このうち3分の1が大統領選に使われ、さらにブッシュはケリーよりも30%多くお金を使った。ケリーは民主党の指名を受けるためにお金を使わなければならなかったはずだが(ブッシュはその必要はない)それでもブッシュのほうが多くお金を使っている。また連邦議会選挙で当選した議員をみるとその95%は負けた候補者よりも多くの選挙資金を使っていた。

この莫大なお金のかかる選挙で、一体、誰が候補者に資金を提供するのかといえば金持ちと大企業である。何のために資金援助をするのかといえば、富裕層は減税を求める。大企業も減税を求める。軍需産業は戦争がしたくてたまらないし、石油業界は石油産出国と戦争をしてその石油をコントロールしたい。そしてブッシュ政権は、これらのスポンサーの希望をすべてかなえてきた。ブッシュはスポンサーのためにこれからも同じ政策をとり、さらには金融業界からの要求を満たすために、社会保障を民営化する方向へ向かうだろう。軍需産業をさらに富ませるためには、先日在韓米軍を移転したのは北朝鮮に対する攻撃能力を強化するためだと韓国民主労働党の議員が主張したが、必要であればアメリカにとってなんの脅威も呈していない北朝鮮を攻撃することすら視野にいれているようである。

私利私欲を満たすためのアフガニスタンイラクへの侵略戦争、米国経済に打撃を与えるという理由で放棄した京都議定書、私がブッシュのほうがいいとコメントしたのは、このようにあまりにも露骨に世界に対してひどいことを行うからだ。多くの人は、ケリーのほうがよかったと言うが、この選挙でケリーに資金を提供した顔ぶれをみれば、それが偽りの希望だということがわかるだろう。なぜならそれはフッシュの資金提供者と同じだからだ。

実際、クリントンはモニカ・ルインスキーとのスキャンダルをそらすかのようにイラクに「砂漠のきつね作戦」を行い、またセルビア人の虐殺を止めるという理由でコソボ紛争では空爆を行った。記録はブッシュと変わりないのに、巧妙に自分の行動を正当化していたクリントン大統領の行為を人々が忘れてしまうのも、ブッシュ大統領があまりにも露骨に私利私欲をむきだしにしているからだろう。

私はブッシュの再選でアメリカの自滅が早まること、それが世界にとって希望の道につながると信じている。イラク戦争でも多くの国はアメリカ追随をやめている。愚かにも小泉首相はそのアメリカのもと自分の地位を維持したいと願っているようだが、それは日本の自滅にもつながる道だ。日本国民がここで気づくべきことは、アメリカの大統領を選ぶ権利はなくても日本のリーダーを選ぶ権利はあるということだ。それを実行に移せば日本は変われる。

PLOアラファト議長死去

パレスチナ自治政府ヤセル・アラファト議長=パレスチナ解放機構PLO)議長=が11月11日、入院先のパリ郊外の病院で死去した。75歳だった。議長の死が和平の転機となるかどうかに関心が集まっている。

◆50カ国以上の代表が葬儀に参列
12日カイロで営まれた葬儀には、エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王、サウジアラビアのアブドラ皇太子ら50カ国以上の代表が参列した。日本政府を代表して槇田邦彦駐エジプト大使が参列した。

アラブ諸国から元首クラスが顔を揃えたのに対し、イスラエルは代表を派遣しなかった。ストロー英、フィッシャー独の両外相をはじめ欧州各国からは外相クラスが参列したのに対し、米国からはバーンズ国務次官補が参列するにとどまった。

葬儀後、議長の遺体はエジプト軍のヘリでヨルダン川西岸のラマラに帰り、数万の大群衆が迎えるなか自治政府議長府内に埋葬された。日本政府が弔問のための特派大使として派遣した川口順子・首相補佐官が埋葬に立ち会った。川口補佐官は外相時代の2002年6月ラマラを訪れ議長と会談している。

小泉純一郎首相は11日発表した談話の中で議長の死去に哀悼の意を表すとともに「議長はイスラエルとの歴史的な和平合意でノーベル平和賞を受賞し、パレスチナ人の国づくりの基礎を築いた。また6回にわたる訪日で日本との友好を深めた」と評価した。

外務省によると、アラファト議長は1981年10月以降、6回来日しており、1996年9月には天皇陛下と会見している。

2000年7月クリントン米大統領の仲介のもとで行われたイスラエルのバラク首相とのキャンプ・デービッド和平交渉が物別れに終わった後、日本政府に直接説明するため同年8月に来日したのが最後となった。

小泉首相 対中ODA卒業表明

首相「対中ODA、もう卒業の時期ではないか」

今、対中ODAについての近い将来の方向を決定するにあたって一番危険なことは、北朝鮮に対する経済制裁と同列視するような一部の意見だ。そんな感覚で対中ODAの幕引きをしたのでは、これまで長い時間と大量の資金を投入してODAが築いた日中の協力関係は水泡に帰してしまう。いかに中国に感謝されながら、また卒業後も中国人の心に残るような対中ODAの幕引きをするか、それがその後の日中関係にも大きな影響を及ぼすだろう。それだけに、政府は底の浅い過激な意見に惑わされず、軟着陸のため、最善の努力をしなければならない。

中国原潜 日本領海侵犯

高い操艦技術 米軍も対処できない恐れも

中国の原子力潜水艦による日本領海侵犯の発生から一カ月余りが経過したが、この領海侵犯が偶発的なものとした中国側の説明とは異なり、意図的で極めて実戦的な訓練の実施だったことが、日米双方の事後調査で次第に明らかになってきた。日本近海における中国潜水艦の作戦行動が予想以上に高度なため、米軍が対処できない可能性も指摘されている。日米安保筋の話を基に、当時「東シナ海で何が起きていたのか」を検証する。

《航路》

原潜は十月中旬に中国・青島を出港、沖縄本島宮古島の間を通ってグアム島に接近した後、石垣島付近に戻って十一月十日に領海を侵犯した。約一カ月間、日米は協力して原潜を追尾した。

原潜は当初、沖縄本島の方向へ向かったが、突然、真北の宮古石垣島間の領海内に突入したようだ。潜航中でも暗号電報を受信できるため、急な針路変更は「領海内を突っ切れ」と命令が出たためだとみられる。海上自衛隊に追い込まれて領海に入ったとの分析もあるが、急角度で針路を変更してまで危険海域に侵入するのは、意図的だったからだと考えるのが自然だ。

《練度》

石垣島宮古島の間はV字峡谷のように狭く地形が複雑。原潜を縦にしたら海面に出てしまうほどの浅い海域だ。時速十九キロ前後で通過するのは怖いくらいで、並の操艦技術ではないという。

海上自衛隊などの哨戒機や護衛艦からは、位置を特定するソナーの音波が二日間にわたって送られ、それが原潜に当たり続けた。艦内では、壁を強打するような大きな何種類もの反響音が絶え間なくこだまし、通常なら乗組員は恐怖でパニックに陥る。技術と度胸に加え、規律もある。

《狙い》

原潜の行動からは、海域を自在に潜航できるかどうかをチェックする目的があったことが分かる。そして、日米に対抗した極めて実戦的な訓練でもあった。

一九九六年の「台湾海峡危機」で、米国は空母を急派した。この教訓から、中国は日本列島からフィリピンを結ぶラインを「第一列島線」とし、これに「第二列島線」を加え、潜水艦の航行に必要なデータの収集や訓練の目安としてきた。

潜水艦の位置を特定するには、ソナーから音波をぶつけ、その反射音を利用する。海域と水深によって水温や塩分濃度、水圧(三要件)が異なり、音波の伝わる速度と方向、角度も違ってくる。逆にこの三要件を調査しておけば、ソナーにどの程度近づいたら相手に捕捉されるか、事前に把握できる。これに海底地形図が加われば、どう空母に近づき、逃げればよいかも学べる。

米機動艦隊は「敵性潜水艦」のいる海域には入らない。乗員数千人と最新鋭機を載せた空母の損傷は、戦略全体に影響するからだ。台湾へ向かう米軍が途中にいる中国潜水艦を排除するまでの間は、事態は中国有利に進む−。中国側はこう筋書きを描いているようだ。

《職人芸》

海上自衛隊は二日間、一度も原潜を見失わなかったが、米海軍ではできなかった可能性を指摘する関係者もいる。米海軍の場合、浅い海域でも、集音マイク型のソナーで潜水艦の原子炉音を拾うことはできるが、居場所を点として特定できない。音波を潜水艦に当てるソナーを使用すると、浅い海域では音波が海底にぶつかり乱反射してしまうからだ。だが、海上自衛隊の熟練のソナー員は、乱反射して拡散した無数の音の中から原潜音を選別する「職人芸」をみせた。音をあまり出さない通常型潜水艦が浅い海域で活動した場合、米海軍は“お手上げ”となる恐れもある。

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【中国原潜の領海侵犯】中国海軍の漢級攻撃型原子力潜水艦が11月月10日朝、沖縄県先島諸島石垣島宮古島の間の日本領海を潜航したまま侵犯した。政府は領海離脱後、海上自衛隊海上警備行動を発令。海自哨戒機と護衛艦が12日午後まで追尾した。政府は中国政府に抗議し、謝罪と再発防止を要求。中国政府は16日に「遺憾」の意を表明。「技術的原因で日本領海へ誤って入った」と説明している。