もっとも重要なのは、今回の事態について日本側にはまったく非がない

温家宝国務院総理は、南アジア4カ国訪問を終えるにあたって、宿泊先のホテルでインド主要メディアとインド駐在の外国人記者と会見し、質問に答えた。

――中国でこのほど日本の教科書事件に対するデモが起きた。これは中日関係にどんな影響をもたらすか。中国は日本が国連安全保障理事会の席を求めていることにどんな姿勢を持っているのか。

中日関係の核心問題は、日本が歴史に正しく対応しなければならないという問題だ。前世紀に日本が起こした当時の侵略戦争は、中国だけでなく、アジアに、世界人民にも深刻な災いをもたらした。最近、中国を含む日本の一部隣国で、日本が国連安保理常任理事国入りを求めていることに対するデモが民間から自発的に起きている。アジア人民のこうした強い反響は日本当局の深い反省を引き起こすべきである。歴史を尊重し、あえて歴史に対する責任を負い、アジアと世界の人民から信用される国になって初めて国際政治においてさらに大きな役割を果たすことができる。中日両国は隣国であり、中日友好は歴史の得た結論である。われわれは歴史を鑑(かがみ)として未来に向かい、中日友好協力関係を引き続き発展させなければならない。(編集ZX)

人民網日本語版」2005年4月13日

結局、政府公認のデモだという事だなぁ。

【中国反日デモ 私はこうみる】国際教養大学長・中嶋嶺雄


産経新聞2005年4月13日


常任理阻止へ「官民一体」


 今回の事件は、まさに官民一体の反日デモ以外のなにものでもない。そもそも、中国ではこのような大規模な街頭デモは許されていない。今回の事態は、政府の思惑とこれまで積み重ねられてきた反日教育の成果がみごとに一致した結果というほかない。


 中国政府の真意は、日本に対する一種のバッシングだ。日中友好の看板を掲げ、経済関係も好調なだけに、中国政府は公式に日本の国連安保理常任理事国入りに反対することはできない。それを若者たちが代わってやってくれたのが、今回の反日デモだ。


 中国では、国連を「聯合国」といい、第二次世界大戦の「戦勝国クラブ」とみる考え方が支配的だ。日本がどれほど国連の分担金を支払っていようが、なんら称賛、評価されるべきものではない。その日本が常任理事国入りすると言い出した。中国にとっては承服できない事態だ。それに対して、きわめて戦略的に打ち出された対抗策が、今回のデモということだ。


 江沢民時代からの反日教育が、非常に有効な効果を上げている。中国は日清戦争から一貫して日本を侵略者として描いていて、そのために、たとえば日本にとって完全な防衛戦争だった日露戦争は中国の教科書に載っていない。それほど徹底した手法を取っている。


 この事態を、日本は安易に見逃してはいけない。治外法権を持つ在外公館が襲撃され、国旗が焼かれる事態は、絶対に許せない、実に由々しきことだ。


 だが、現実には残念ながら逆の反応も出ている。一部の日本の財界人は、みごとに中国側の批判に応じて、中国への譲歩を主張している。学者や、マスコミの中にも、同様の主張が多い。これでは、ますます中国の思うつぼだ。


 日本がこのまま中国の属国になるという選択をするのなら別だが、今回の事件は、今後の日本の国家としてのあり方を問うものでもある。おそらく米国も深刻に事態を受け止めているだろう。


 現代中国社会には貧富の差の拡大に伴い、巨大な欲求不満が蓄積されている。同様の事件は、今後も断続的に発生すると覚悟しておかなければならない。そんな状況にあって、今回のデモは共産党政権にとって非常に好都合だ。つまり、簡単には状況は改善されないだろう。だからこそ、日本は毅然(きぜん)とした姿勢を貫く必要がある。


 もっとも重要なのは、今回の事態について日本側にはまったく非がないという明確な視点を、日本が持つことだ。中国も悪いが、日本も悪いといった議論は、今回は絶対にやってはいけない。日中国交樹立以降、そうやって問題を先送りしてきたツケが、今回のデモとなって噴出したと知るべきだ。(談)


 なかじま・みねお 東京大学大学院修了。平成7−13年東京外国語大学学長。現在、国際教養大学学長、文部科学省中央教育審議会大学院部会長などを務める。主な著書に「北京烈烈」(サントリー学芸賞受賞)など。第19回正論大賞受賞。