地上の楽園

李英和氏の本に続いて。
在日コリアンだった鄭箕海(チョン・キヘ)氏の、1960年に日本から北朝鮮に帰国し、さらに脱北し韓国に亡命するまでの悪夢の三十四年間の記録だ。

帰国船―北朝鮮 凍土への旅立ち (文春文庫)

帰国船―北朝鮮 凍土への旅立ち (文春文庫)

胸が痛むのは、17歳の時、日本でそれなりに豊かに暮らしていた氏が、老朽化したソ連の軍艦を改造した帰国船に乗り込んだ時に感じた日本との落差を感じる下りだ。
オンボロ船、食堂や船室、トイレの臭気、女性乗務員の身なりなどから日本と比べ物にならないほど北朝鮮は遅れていると直感している。
船が動き出すまでに「話が違う。もしかすると、自分たちはとんでもないところに行こうとしているのではないか。」と暗い将来を見抜いている。