Venus and Mars

と言えば、私には「Paul McCartney and Wings」のアルバムが連想されるのだけど、
ネオコンの論理」では、

アメリカ人が戦いの神、火星から、ヨーロッパ人が美と愛の神、金星からきた。

という表現に変わる。この比喩は、著者がどう思っているか判らないが、この本の主題や、ロバート・ケーガンという人の考え方を良く表していると思う。この本の「はじめに」の一段落目に、より具体的に記されている。

ヨーロッパとアメリカが同じ世界観を共有しているという幻想にすがるのは止めるべき時期がきている。同じ世界に住んでいるとすら考えるべきではない。力と言う決定的な面についての見方、つまり軍事力の有効性、道義性、妥当性についての見方が、アメリカとヨーロッパとで違ってきている。

つまり、幕末のペリーの頃と全く同じ、砲艦外交を今も行っていると言うことだ。
同じ米欧の対立に関し、「アメリカ軍が日本からいなくなる」では、以下のような記述がある。


イラク戦争を巡るブッシュ大統領の悲劇は、文化的にも歴史的にも強力な同盟国であるべきはずのヨーロッパの国々と対立しなければならないことである。いまブッシュ政権の下のアメリカは、ヨーロッパと歴史始まって以来の厳しい対立を続けている。


だがこの対立の原因は、イラク戦争についての意見の不一致といったような単純なものではない。イラク戦争は両者の対立を誘発しただけのことである。

イラク戦争で、独・仏の利権をアメリカが奪ったのだから対立して当然だけれど、そのこと以上に国家と言うものに対するアイデアが、対立の根本にあると言うのだ。

シュミット元首相は、ヨーロッパ連合の強力な推進者である。国家単位を超えた巨大な組織をヨーロッパに作ろうと考えている。彼は歴史の変化とともに国家主権を超えた共同体国家というものが人類にとって必要であると考え、国家の概念も変わりつつあると思っている。

こうした考え方を、ブッシュ大統領アメリカは受け入れられない。
ケーガン氏によれば、アメリカの軍事力によってもたらされた冷戦後の世界「ポストモダンの楽園」の中でのみ可能になったのだ、と言うことになる。
国連が国家の権限を制限することは出来ず、「国家主権が最高のものである。」という考え方を取っている。この国家に対するヨーロッパとアメリカの考え方の相違は、新たな闘争の軸となり、今後の世界の対立の構図となるようだ。